2012年12月18日火曜日

『孔子』 貝塚 茂樹 著

孔子の人生、そして彼が生きた時代について概観する本。

本書を手に取ったのは、孔子について知りたいというよりは、孔子について貝塚先生がどう料理しているのだろう? という興味からだった。

まず感想としては、中国古典時代の碩学らしい重厚な背景知識を感じさせながらも、冗長になることなく簡潔にまとめられているな、というところ。だが、少し物足りないところもある。著者本人が後書きで述べているように、前半生を描くことに力をかけすぎて、大勢の弟子を引き連れていた後半生についてはかなりあっさり目な記述になっている。

しかも、なぜか後半では前半の記述の繰り返し的なものが散見され、短い本なのに力尽きたのかなあと感じさせられた。

また一方で、史実に基づき理想化しない孔子を描きたいという気持ちがあるものの、やはり著者自身が孔子に尊崇の念を抱いているためか、思いがやや上滑りしているような記載も見受けられる。気になる程ではないが、全体がフラットに描かれているので、もう少し距離を置いた書き方でもいいのではないかと感じた。

とはいうものの、孔子という人間を生んだ時代についての解説としては、教科書的な本で安定感はある。すごく面白いというものではないし、何かが分かった気になるような本でもないが、基礎的な知識を仕入れる本としては申し分ない。