2013年3月2日土曜日

『日宋貿易と「硫黄の道」』山内 晋次 著

日宋貿易と「硫黄の道」 (日本史リブレット)
日宋貿易において日本からの重要な輸出品だった(と思われる)硫黄について、その貿易の実態を探る本。

日宋貿易と言えば、日本からは金が輸出されていたというが、量的には硫黄の方が大きいのでは? というところから、資料に残された硫黄貿易の記録を辿り、東アジアにおいて10世紀末から16世紀ごろまで硫黄貿易のネットワークが広がっていたことを推論し、それを「硫黄の道」と名付ける。

そもそも硫黄貿易に関する記録は少なく、論拠する資料が限定的にならざるを得ない。正直、「それだけしかないのか」というのが感想だ。そのため、当時硫黄貿易が盛んに行われていたこと自体は事実らしくても、定量的な話は今のところ一切できないし、具体的にどのような船でどのような人々が硫黄を扱っていたのかもよく分からない。

とはいえ、そのあたりの研究もないわけではないのだから、もう少し紹介したほうが親切だと感じた。800円(税別)もするにしては内容が薄い(87ページしかない)と言わざるを得ないが、硫黄貿易の研究は始まったばかりで、このように纏められたのは最初と思うのでその点は大いに評価したい。

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